不動産価格、事業価値、株式価格を分ける
売出資料の金額に土地、建物、備品、営業権、在庫がどこまで含まれるかを明らかにします。株式価格で示される場合は、会社の借入や現預金の扱い、実行日までの変動をどう調整するかも確認が必要です。
中小M&Aガイドラインは複数の算定方法と調査・交渉の過程を整理していますが、ホテルに共通の一つの倍率を与えるものではありません。どの資料からどの範囲を評価したかを残し、別の取引手法の価格をそのまま比較しないようにします。
業績は、予約や入金と対象期間を照合する
決算書、試算表、部門別の売上、予約・会計の出力、銀行入金などを対応させます。売上が計上された月と宿泊した月、前受金を受けた月は同じとは限らないため、実績の定義を揃えることが大切です。これは調査方法の提案であり、資料を揃えれば将来収益が確定するものではありません。
オーナー固有の費用、無償の家族労働、関連会社への支払などがあれば、新体制で必要な費用を確認します。買主の想定を実績として混ぜず、既存の記録、調整の根拠、将来の計画を別々に表示すると検討しやすくなります。
建物と設備の調査から、必要な改修を把握する
確認検査の履歴、増改築、耐震、給湯、空調、浴場や管路などを調べ、継続使用、修繕、更新のどれを想定するか整理します。国の現況調査ガイドラインは法適合の調査方法を示すもので、工事費の相場表ではありません。
見積りは、対象数量、仕様、撤去・運搬、仮設、設計・申請、検査、休業の範囲を確認します。客室単価や一室当たりの仮定だけで総額を決めず、調査後に判明する追加工事の扱いを契約と予算へ反映しましょう。
譲渡価格以外の資金を、重複なく積み上げる
仲介やFA、調査、登記、税、備品、在庫、保証金、システム移行、採用・研修など、案件で必要な項目を一覧にします。手数料に何が含まれるかは契約で違うため、説明された業務と報酬を対応させることが必要です。
引渡し後の仕入や給与、予約金の精算、売上の入金までの運転資金も考えます。休館を伴う場合は、その期間と固定費を計画に反映します。これは資金表の作り方の提案であり、すべての宿に共通の金額や必要月数を提示するものではありません。
税と債務は、主体と資産の種類から確認する
国税庁は、個人が事業用建物や機械等を売る場合の課税対象性を案内していますが、納税義務の免除などは別に判定するとしています。この案内の範囲を超えて、法人や個別案件の税額を確定する説明には使いません。
借入、リース、未払金、保証、修繕の未履行、預り金等も対象を調べます。株式譲渡と事業譲渡では引き継ぐ範囲が異なるため、価格算定と契約、税務の担当者が同じ対象一覧を使って確認すると、前提の食違いを減らせます。
前提を変えた資金表で、判断の根拠を残す
利用者が入力する資金表なら、各金額の根拠資料、見積り日、税の含み方、支払時期を付けます。見込みの売上や稼働率は計画として明示し、原統計や過去の実績と混ぜず、将来の回収を保証する数値にはしません。
旅館業の承認や設備の是正が遅れる場合の開業時期、追加費用、誰の負担になるかを契約と並べます。資料の不足は未確認として残し、確認先と次の調査を決めることで、価格交渉を具体的な前提に基づいて進められます。
Questions & answers
よくある質問
客室数から売買価格を決められますか?
客室数だけでは、資産、収益、債務、設備と必要な改修を捉えられません。取引対象を定め、複数の原資料と調査に基づいて検討します。
売出価格と総投資額は同じですか?
異なります。手数料、調査、税・登記、初期改修、開業準備、運転資金等を、案件ごとの根拠で別に積み上げます。
建物に一律の改修単価を当ててもよいですか?
本稿は一律の単価を提示しません。現況と予定する工事、数量、仕様、申請・休業の範囲を確認し、個別の見積りで検討します。
利回りや回収期間を保証できますか?
将来の売上、稼働、費用、改修や入金の時期は計画の前提です。確認済みの実績と見込みを分け、前提を変えた検討を行うもので、回収や収益を保証するものではありません。