01 / WHAT CHANGES HANDS
「旅館を譲る」には、
3つの方法があります。
土地と建物を売るのか、営業している事業を譲るのか、会社の株式を譲るのか。まずは対象を確かめます。同じ旅館でも、選ぶ方法によって引き継ぐ契約や債務、必要な手続きが違います。
| 方法 | 主な譲渡対象 | 最初に確かめたいこと |
|---|---|---|
| 不動産売買 | 土地・建物。備品や設備を含める範囲は契約で決めます。 | 営業、温泉、予約、雇用をどう引き継ぐか。建物の取得とは別に、運営の準備が必要です。 |
| 事業譲渡 | 合意した事業・資産・契約など。 | 契約先の承諾、従業員への説明と同意、許可の承継。資産の名義と営業者が異なる場合は、所有者との調整も必要です。 |
| 株式譲渡 | 旅館を運営する会社の株式。 | 会社は存続し、債務や契約も原則として残ります。簿外債務、保証、株主変更に関する契約条項まで調べます。 |
会社の株式を取得しても、社長個人が所有する土地まで一緒に移るとは限りません。「不動産の所有者」「旅館業の営業者」「温泉契約の名義人」を並べると、別途必要な売買や承諾が見えてきます。[1]
WHO WILL CARRY THE INN FORWARD?
古い宿の価値を、誰がどう受け止めるのか。
長く使ってきた建物、小さな客室数、家族で切り盛りしてきた仕事。同じ条件でも、買主の運営体制や計画によって評価は変わります。主な4つのタイプを知っておくと、宿のどこを伝え、何を話し合うかが見えてきます。
今の商圏や運営体制を広げたい。
近隣で宿を営む会社なら、送迎、清掃、仕入れ、予約管理を連携できるかが検討の軸になります。客室数だけでなく、厨房の能力、駐車場、スタッフの通勤、既存施設との距離も大切です。温泉や眺望が自社の宿にない魅力なら、客層や滞在プランを広げる選択肢にもなります。
売主からは、稼働している客室、職種別の人員、食事の提供数、月ごとの収支を伝えると、買主が自社の体制で運営できるかを考えやすくなります。
本業の強みを宿泊事業へつなぎたい。
建設・不動産・飲食など、本業の人材や技術を活かして宿泊業を始める法人も検討相手になります。建物を直せることと、毎日の接客・清掃・予約を回せることは別の準備です。現場責任者を誰にするか、自主運営か委託か、開業までの資金をどう確保するかを、物件の価格と一緒に話し合います。
買主にとっては、営業中の宿を引き継ぐ案と、一度休館して改装する案で必要な運転資金が変わります。売主が引継ぎに関われる期間も、重要な条件です。
残せる魅力と、改修後の収支を見たい。
資金を出す投資家と、宿を運営する会社が組む場合は、取得代金に改修費・開業準備費を加えた総投資を見ます。源泉、立地、建築、庭、客室の広さなどを活かせるか、必要な工事と許認可をどこまで確認できているかが判断を左右します。
「改装すれば単価が上がる」という期待だけでは資金計画は固まりません。改装中の休業、再開後の採用、閑散期、設備更新まで含め、運営会社の計画と投資家の資金負担をすり合わせます。
暮らしと仕事が続けられる規模を探したい。
10室前後などの小規模な宿を検討する場合は、客室数と同じくらい、オーナーの住居、厨房の動線、食事の手間、清掃に使う時間が大切です。現在の家族が無償で担う仕事を、新しい経営者が同じように引き受けられるかを確かめます。
取得予算を使い切らず、当面の生活費と運転資金を分けて確保することも必要です。「夫婦2人でできる」という一言で判断せず、繁忙日の仕事量と外注できる仕事まで具体的に確認します。
上記は買主の検討方針を整理した例です。現在の購入希望は、公開されている購入希望や個別の相談で、地域・予算・運営体制を確認できます。
02 / FOR SELLERS
売ると決める前から、
始められます。
「引退の時期はまだ先」「従業員のことが気になる」「直してからでないと売れないのでは」。そんな段階でも、今の状況と希望を整理できます。価格や資料をすべてそろえてから相談する必要はありません。
- 01
残したいことを、3つほど。
屋号を続けてほしい。雇用を大切にしてほしい。家族の住居部分は残したい。譲れない希望と、相談できる条件を分けておくと、候補者との話が進みやすくなります。
- 02
分かる資料から集める。
登記、営業許可、直近の決算や月別売上、借入残高、修繕履歴。手元にあるものと、確認が必要なものを分けます。建物の一部だけ使っている場合や、設備の不具合も伝えておきます。
- 03
片付けや大きな改修は、相談してから。
買主が残したい建具や、使い直したい設備もあります。営業上必要な安全・衛生対応は続けながら、売却のための工事は、現況で引き継ぐ案と支出を比べてから判断できます。
- 04
相続・共有、借入返済、休業中の設備など、確認が必要な事情を先に伝えることで、次に集める資料や相談先を決めやすくなります。
段階別の必要書類を見る →03 / FOR BUYERS
「買える価格」と、
「続けられる予算」を考える。
物件を探す前に、どんな宿を、誰と運営したいかを描いてみます。価格だけで候補を絞るより、運営方法と追加費用を含めて考える方が、自分に合う旅館を見つけやすくなります。
地域・総予算・運営体制を決める。
通える距離、希望する規模、食事の提供、温泉の有無、自主運営か委託か。まだ決めきれない項目は、優先順位だけでも付けておきます。
旅館だけの一覧で、取引の形を見る。
同じ価格帯でも、不動産の売買価格、事業の譲渡対価、株式の対価では対象が違います。地域・規模とともに、何に対する金額かを読み取ります。
旅館・温泉旅館の物件一覧を見る →営業と修繕の条件を、売主に尋ねる。
稼働している客室、月別の売上・費用、従業員、設備更新、温泉契約。売主の承認を得ながら資料を確認し、見学や調査の範囲を相談します。
TOTAL INVESTMENT
買主の総予算
取得代金 + 諸費用
+ 改修・設備更新費
+ 開業準備・運転資金
購入条件を登録しておくと、探している地域や予算、運営の考え方を伝えられます。融資を利用する場合は、取得費だけでなく改修費と運転資金の見積もりを用意して、金融機関へ相談します。
04 / PRICE & PROCEEDS
同じ旅館に、
4つの価格があります。
査定額、売出価格、買主の提示額、成約価格は、それぞれ意味が違います。金額が離れているときは、評価の根拠だけでなく、修繕や借入、設備などをどちらが引き受ける前提かも確かめます。
査定額
資料や現況、比較事例、収益などから見立てた価格。評価時点と前提を確認します。
売出価格
売主が募集時に示す希望額。借入残高や希望する手残りも影響します。
買主の提示額
取得後の収益や修繕、資金調達を踏まえた提案額。付帯条件と一緒に読みます。
成約価格
調査と交渉を経て、売主と買主が最終的に合意した価格。対象資産や費用の負担も含めた取引条件の一部です。
提示額の差は、宿への評価の差だけではありません。
たとえば、給湯設備を更新してから渡す提案と、買主が更新する提案では、修繕負担の違いが提示額に表れます。株式譲渡なら、会社に残る現預金・借入や役員借入金の扱いも関わります。金額の説明を求めるときは「何を含み、何を差し引いた提案か」まで尋ねると、話し合う余地が見えてきます。
買主は、3つの視点を行き来しながら価格を考えます。
旅館には、商いとしての収益力と、不動産・温泉・立地の価値があります。営業を続けるのか、改修して再開するのかでも見方は変わります。どの方法で評価した金額か、何を取得する金額かまで確認することが、価格のすれ違いを減らす出発点です。
① 収益力を見る――過去の利益を、引継ぎ後の利益へ直す。
営業利益やEBITDAを使う場合は、まず数字の中身を確かめます。EBITDAは、ここでは営業利益に減価償却費を加えた指標として扱います。家族が無償で担う仕事、オーナー固有の支出、一時的な修繕などを確認し、次の経営者でも続けられる収益へ調整します。設備を保有する会社と賃借して運営する会社では、費用の構造も異なります。
利益に一定の倍率を掛ける比較と、将来のキャッシュフローを割り引く評価、安定した純収益を還元する不動産評価は、それぞれ算定の前提が違います。倍率や還元利回りは、立地、規模、運営の安定性、契約、修繕負担により変わるため、旅館全体に一つの数字を当てるのではなく、根拠と費用範囲を確認します。[1]
正常な収益力として置いたEBITDAが年1,000万円、仮の倍率が5倍なら、計算上の企業価値は5,000万円です。そこから株式価値を考える際、同じ範囲の有利子負債1,200万円と現預金200万円を調整する例では、5,000−1,200+200=4,000万円となります。
すべて説明用の仮定です。5倍を相場とする例ではありません。実際には余剰資産、運転資本、役員借入金等の調整や、対象会社に属さない土地建物の扱いも確認します。EBITDAは、税金・返済・設備更新後に自由に使える資金とは異なります。
② 資産を見る――土地・建物・湯を、取得後に使える条件で見る。
土地の広さや眺望、交通、建物の残存価値、源泉や受湯の条件も検討材料です。ただし、修繕の必要額、借地や接道、自然公園等の制限によって、同じ面積でも活用できる範囲は変わります。源泉がある場合も、湯量・温度・管理費・設備の状態と、権利や許可を引き継げる条件を確かめます。
「昔いくらかけて建てたか」と「今の買主が使い続けるためにいくら必要か」は異なります。建物の価格だけでなく、使えない棟の維持や将来の撤去費まで見て評価します。会社が不動産を保有している場合、収益評価と資産評価の対象を確かめ、同じ価値を重ねて加算しないようにします。
③ 再生後から逆算する――赤字や休館中でも、計画を具体的に。
現在の赤字だけで判断せず、休止客室の再開、食事提供の見直し、予約経路や人員体制の改善で、どの程度の収益が見込めるかを検討します。売上の想定は客室数・営業日・稼働率・単価に分け、人件費や光熱費も同じ営業計画に沿って積み上げます。好調な月の数字を、そのまま通年へ伸ばさないことが大切です。
たとえば、買主が事業計画に基づいて総投資の上限を1億円と仮定し、改修に2,000万円、取得諸費用に500万円、開業準備・運転資金に500万円を見込むなら、取得代金に充てられる枠は7,000万円です。これは資金配分の例であり、物件の評価額そのものではありません。工事費や営業開始時期が変われば、提示できる価格も変わります。
再生計画は、見積もり、許認可の事前相談、運営する人、資金調達がそろって初めて具体性を持ちます。売主もその根拠を確認することで、価格を下げる交渉なのか、費用やリスクの分担を変える提案なのかを判断しやすくなります。
売主の資金を比べる計算例
売価が高い案と、手元に多く残る案。
次の金額は仕組みを説明するための仮定です。相場・成約事例・料金の見積もりではありません。
| 項目 | 売主が修繕して売る | 現況で引き継ぐ |
|---|---|---|
| 売買代金 | 8,000万円 | 7,600万円 |
| 売主が負担する修繕費 | 500万円 | 0万円 |
| 諸費用(仮定) | 300万円 | 300万円 |
| 借入金の返済 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 上の支出を引いた資金 | 4,200万円 | 4,300万円 |
8,000−500−300−3,000=4,200万円、7,600−0−300−3,000=4,300万円。この仮定では現況売却の方が100万円多く残ります。譲渡所得税・法人税等を計算する前の比較です。実際には取引方法、費用の負担、各種精算、課税関係によって変わります。
05 / SHARE WITH CARE
誰に知らせるか。
どこまで伝えるか。
案件の存在を知らせる範囲と、相手に見せる情報の深さは別に考えます。TSUNAGUでは完全非公開から始め、売主の希望と審査に応じて匿名の概要を掲載できます。詳しい情報は、承認された相手へ段階的に共有します。[6]
案件の存在を知らせる、3つの見せ方。
一覧や検索には出さず、売主が承認した買主へ個別に紹介します。
会員向けに匿名の概要を掲載します。実名や財務資料は別途承認を経て共有します。
一般にも匿名の概要を掲載します。公開前に、施設を特定する手掛かりが含まれていないか確認します。
詳しい情報は、相手を確かめてから。
- D1 匿名の概要
広い地域区分、施設種類、価格帯など。
- D2 施設名・所在地
買主の確認、案件ごとの秘密保持手続、売主の承認を経て開示。
- D3 個別の資料
決算書や登記などを、資料・閲覧者・期間ごとに許可して共有。
情報を守るための手続きでも、特定や二次共有の可能性を完全になくせるわけではありません。すでに閲覧・保存された情報は回収できないため、開示する相手と範囲、地域や従業員へ説明する時期を慎重に決めます。
情報開示と秘密保持の仕組みを確認する →06 / A RYOKAN IS MORE THAN A BUILDING
建物の向こうにある、
旅館ならではの確認。
売主には当たり前の日常でも、次の経営者にとっては初めての仕事です。許可、湯、働く人、建物、予約。営業を支える条件を、書類と現地の両方で確かめることが、引渡し後の安心につながります。
旅館業の許可と、引継ぎの予定日。
営業中の旅館を事業譲渡する場合は、事前の承認によって営業者の地位を承継できる制度があります。譲渡の効力が生じる前から、譲渡方法と営業計画を保健所等へ相談します。増改築や用途の変更がある場合も、先に計画を伝えておきます。[2]
旅館業の承継手続を読む →温泉の契約と、使い続ける費用。
自家源泉か、組合や供給会社からの引湯か。受湯量・料金・更新条件、配管の所有者、修繕分担を確認します。温泉利用許可の手続は旅館業の承継とは別です。名義変更で新たな許可が必要になる場合もあり、供給元と行政の双方へ確認します。[3]
温泉旅館の権利と承継を詳しく読む →従業員と家族が担っている仕事。
接客、料理、清掃、湯の管理、地域との調整。引継ぎに必要な人と仕事、説明の時期を具体的にします。事業譲渡で労働契約を引き継ぐ場合には、対象となる従業員の承諾が必要です。[4]
運営と人員体制のガイドへ →建物・設備と、これからの修繕。
雨漏り、耐震、給排水、ボイラー、消防設備、休止中の客室。修繕履歴と点検記録を基に、営業を続けるための工事と、買主が望む改装を分けて見積もります。借地、境界、私道、配管の経路も確認します。
設備更新・改修の確認項目へ →予約・前受金・取引先の切替え。
引渡し日をまたぐ予約、宿泊代の入金、キャンセル対応、OTAや仕入先との契約。誰がサービスを提供し、誰が売上と費用を受け持つのかを決め、精算と連絡の担当を引継ぎ表に残します。
予約と前受金の精算を読む →THREE PRACTICAL HURDLES
調査の後半で止まりやすい、3つの実務の壁。
買主の調査が進んでから、費用や承諾の条件が初めて分かると、価格や引渡し日を組み直すことになります。特に温泉、建築・消防、借入と担保は、売主が早い段階で資料と相談先を把握しておきたい項目です。
許可書だけでは分からない、湯を受ける契約。
行政の温泉利用許可と、温泉組合・配湯会社から供給を受ける契約は別に確認します。受湯の名義を変更できるか、承諾料や加入金・更新料が必要か、湯量や利用時間に上限があるか。契約書に加えて規約や料金表もそろえ、供給元に予定する譲渡方法と営業計画を伝えます。
源泉ポンプが止まったとき、引湯管に漏れが起きたとき、誰が直し、どこまで費用を負担するのかも重要です。配管が他人の土地や私道を通る場合には、その利用条件も調べます。新しい客室風呂を増やす計画があっても、受湯量や設備容量が足りるとは限りません。
事前の備え:供給契約・組合規約・直近の請求書・修繕記録を並べ、名義変更時に必要な承諾、費用、手続きの日程を供給元と確認します。行政への申請と並行して進めることで、温泉を営業に使い始める日の見通しを立てやすくなります。[3]
図面・登記・現地が、同じ建物を指しているか。
昭和期から増改築を重ねた旅館では、登記されている面積、確認申請の図面、実際の建物が一致しないことがあります。未登記部分の有無と、建築基準法への適合状況はそれぞれ確認が必要です。確認済証・検査済証が手元にない場合は、行政に残る台帳等の記録を確認し、建築士と現況を調べます。
検査済証が見つからないことだけで建物の適否を決めず、現在までの工事履歴と、これから行う改修の内容を照合します。国土交通省の現況調査ガイドライン等を手掛かりに、調査方法や既存不適格の扱い、必要な是正を建築士・確認検査機関・行政と検討します。調査報告があれば、どの改修でも確認申請が不要になるという意味ではありません。[9]
消防は、設備が設置されているかに加え、点検結果、指摘事項、改修履歴、使用していない区画を含む運用を確認します。客室の増設、サウナ、用途の変更など、買主の計画によって必要な対応が変わる場合があります。[10]
事前の備え:確認済証・検査済証・図面・登記・消防点検報告を集め、相違点と不足資料を一覧にします。金融機関へも現況と調査・是正の方針を早めに伝えます。担保評価や融資条件への影響、工事費と営業再開時期を、調査前に確定したものとして扱わず、確認が進むたびに資金計画へ反映します。
価格の合意と、債権者の承諾を並行して進める。
売却代金で返済できる場合でも、返済予定日の残高、期限前返済の費用、抵当権抹消の書類、個人保証の扱いを金融機関に確認します。土地と建物が別々の名義だったり、他の物件も共同担保に入っていたりすると、手続きの対象も増えます。
借入残高が売却代金を上回る場合は、差額をどう補うか、債権者がどの条件なら担保抹消に応じるかを整理します。任意売却や再生の相談を検討する際も、売主と買主の合意だけで進めず、登記、借入残高、保証、差押えの有無、価格の根拠、代金の配分、決済予定を示して協議します。
担保を外す承諾と、残る債務・個人保証の整理は、それぞれ確認が必要です。売却によって残債が当然に免除されるわけではありません。債権者の判断や法的手続きが関わる場合には、弁護士・司法書士等と連携し、当事者が約束できる範囲を確かめて進めます。
事前の備え:借入先・残高・担保・保証・期限を一つの表にまとめ、まず相談窓口へ現状を伝えます。買主にも、決済に向けて必要な承諾と期限を共有します。返済の遅れやサービサーへの移管がある場合は、通知や期限のある書類から先に確認します。
任意売却・債権者調整の専門窓口へ →
07 / FROM FIRST CONTACT TO HANDOVER
出会いから引渡しまで、
売主と買主が一緒に進める。
価格の合意と、営業を引き継げる状態を整えることは、並行して進みます。大切なのは、調査・融資・許認可・説明の予定を早めに共有すること。関係者が多い旅館ほど、引渡しの日から逆算して準備します。
- 01
希望を整理して、登録・検索。
売主は非公開の下書きへ。買主は旅館一覧で候補を探し、購入条件を登録します。
- 02
相手を知り、情報開示を相談。
目的や運営の考えを確かめ、必要な秘密保持手続と承認を経て、実名情報や資料を共有します。
- 03
見学・調査と、条件のすり合わせ。
現地と資料を確認し、価格、修繕、雇用、引渡し時期を協議します。融資や許認可はこの段階から相談します。
- 04
契約の準備を依頼。
担当者と業務範囲・報酬を確認し、必要な契約手続に進みます。調査結果と合意条件を、契約書などへ反映します。
- 05
契約、決済・引渡し、運営の切替え。
決済前の条件が満たされたことを確かめ、代金・登記・鍵・設備・予約等を引き継ぎます。譲渡後の支援期間や連絡先も決めておきます。
期間は、ひとつの約束より、工程ごとに。
資料整理、買主探し、現地調査、融資、許認可の手続きは、順番に待つよりも、必要な情報がそろったところから並行して進めます。次は、初回相談から引渡しまでの日程を考えるための工程例です。
| 工程 | 準備に見込む期間の例 | この段階で進めたいこと |
|---|---|---|
| 資料整理・登録 | 2〜4週間 | 名義、登記、許可、収支、借入、修繕の資料を整理。不足資料と確認先を決めます。 |
| 買主探し・初期面談 | 1〜3か月を区切りに反応を見直す | 候補者の地域・予算・運営方針を確認し、開示範囲を決めます。相手探しにはさらに時間を要する場合もあります。 |
| 現地調査・条件協議 | 資料開示後、3〜6週間 | 設備、法令、契約、労務を調査し、見積もりと追加費用を更新。専門調査や是正があれば別途日程を確保します。 |
| 融資相談・許認可 | 調査と並行し、1〜2か月以上の余裕を見込む | 金融機関に取得・改修・運転資金の計画を提示。保健所と譲渡方法・営業計画を相談し、管轄の処理期間に合わせて申請します。 |
| 契約・決済・引渡し | 契約後、1〜2か月程度を仮置きして調整 | 融資、担保抹消、承継承認等の条件を確認し、従業員・予約・設備の切替えを準備します。 |
上の期間は工程を検討するための例です。物件の販売期間、金融機関の審査期間、行政の標準処理期間は、それぞれ個別に確認します。各行を単純に足した期間で成約するという意味ではなく、買主の選定、追加調査、工事、債権者協議等によって全体の日程は変わります。
保健所の標準処理期間は、書類を作る時間とは別です。
たとえば京都市は、旅館業の承継について標準処理期間を23日とし、閉庁日や書類の補正等に要する期間を含まないと案内しています。契約書や法人の書類をそろえる準備、図面の確認、事前相談までを含む日数ではありません。施設所在地の窓口へ、予定日が決まる前から相談しておきます。[10]
引渡し日から逆算すると、早く動くべきことが分かります。
旅館業の事業譲渡は、効力が生じる前に承継承認を受ける必要があります。一方、金融機関の融資実行には、担保や自己資金、契約上の条件の確認が必要です。どちらかだけ先に進めて引渡し日を固定すると、もう一方の準備が間に合わず、予約客への対応や営業開始に影響が出かねません。
買主の最終判断、融資、行政手続、抵当権抹消、従業員への説明を工程表に並べ、「誰が・何を・いつまでに確認するか」を共有します。基本合意や契約では、調査の期限、条件が満たされない場合の扱い、引渡し日の変更方法も専門家と整理します。
掲載・交渉は無料。
成約時の契約サポートは有料です。
TSUNAGUを通じた取引では、ジャパンリアルターの契約サポートを利用し、成約時に売主・買主それぞれに報酬が発生します。業務範囲と金額は、契約手続きに入る前に確認できます。株式譲渡や事業譲渡などは、対象と算定基準を確認して個別に見積もります。[7]
加盟不動産会社の掲載案件は、その会社との契約・料金を確認します。
08 / KEEP THE STORY, RENEW THE BUSINESS
残すものと、変えるもの。
その両方を話せる承継へ。
木の廊下、庭を眺める客室、長く親しまれた料理。次の経営者が魅力を感じるのは、新しい設備だけではありません。宿らしさを伝えながら、働き方や設備の更新を具体的に話すことで、承継後の姿を一緒に考えられます。

旅館として、磨き直す。
客室の設えや料理、湯浴みの魅力を残しながら、給湯・空調・断熱などを更新。営業に欠かせない修繕から優先順位を付けます。
働き方を、引き継ぎやすく。
予約・決済の仕組み、清掃の手順、食事提供の方法を見直し、特定の人だけが知る仕事を少しずつ共有します。
一部の使い方を、変えてみる。
小さな別館の一棟貸しや、食事を外で楽しむ滞在なども検討できます。用途や許認可、地域のルール、追加投資を確かめてから計画します。
09 / READ THE NEXT CHAPTER
知りたいところを、
もう少し詳しく。
ここからは、検討が進んだときの専門ガイドへ。売却の準備、取得後の運営、地域の歴史と魅力を、それぞれのページで深められます。
10 / QUESTIONS BEFORE YOU BEGIN
始める前の、
よくあるご質問。
売却するか決めていなくても、相談できますか?
はい。希望する時期や残したい条件を整理する段階から相談できます。価格や資料がすべて決まっていなくても、分かる範囲で非公開の下書きを始められます。登録しただけで一般や他の会員へ掲載されることはありません。
査定額と買主の提示額が違うのは、なぜですか?
評価の時点や収益の見方に加え、譲渡対象、修繕費、借入・現預金の扱いなどの前提が異なるためです。金額だけでなく、何を含み、誰がどの費用を負担する提案かを確かめると、交渉する項目が明確になります。
旅館を買えば、営業許可と温泉もそのまま使えますか?
土地・建物を買うだけでは、営業に必要な手続きは済みません。旅館業の事業譲渡には事前承認による地位承継の制度があります。温泉利用の許可や受湯契約は別に、所在地の窓口と供給元へ確認します。
休館中で設備が古い旅館も、登録できますか?
休館中、残置物がある、設備の改修が進んでいない状態でも、まず相談できます。分かっている不具合や休業期間、点検・修繕の記録を伝え、営業再開に必要な調査と引渡し条件を整理します。掲載や取引の可否は個別に確認します。
買主は、購入価格以外にどんな費用を見ておけばよいですか?
登記・税・報酬などの取得諸費用、建物や設備の修繕費、備品や開業準備の費用、営業を続けるための運転資金を見込みます。借入を使う場合は返済と手元資金も含め、取得後の収支を検討します。
屋号や従業員を残すことを、売却の条件にできますか?
希望として提示し、買主が引き受けられる内容を話し合えます。屋号の使用範囲、雇用条件、説明の時期、売主が引継ぎに関わる期間を具体化し、合意内容を契約と引継ぎ計画に反映します。事業譲渡で労働契約を引き継ぐ場合は、対象従業員の承諾が必要です。
旅館だけを探せる物件一覧はありますか?
はい。「旅館・温泉旅館」の業態別一覧があります。公開を承認された匿名概要等を確認し、地域や価格帯を絞って探せます。詳しい施設情報は、案件ごとの手続きと売主の承認を経て共有されます。
TSUNAGUはどこまで無料で使えますか?
会員登録、物件掲載、検索、当事者間のメッセージや交渉、エージェントへの相談は無料です。TSUNAGUを通じて取引を進める場合は契約サポートを利用し、成約時に売主・買主それぞれに報酬が発生します。業務範囲と金額は契約手続きに入る前に確認できます。 加盟不動産会社の掲載案件は、その会社との契約・料金を確認します。
11 / YOUR NEXT STEP
この宿の先を、
話すところから。
売る時期も、買いたい宿も、まだ決まっていなくて構いません。現在の状況と希望を、分かるところからお聞かせください。
地域と運営の希望から、
旅館を探す。
公開中の概要を確かめ、希望に合う候補や取得後の運営を検討できます。
旅館の物件一覧を見る ↗購入条件を登録する →購入・代表 03-6279-498712 / EDITORIAL & SOURCES
出典・編集方針・
写真クレジット
編集・構成:TSUNAGU編集部(ジャパンリアルター株式会社)。最終確認日:2026年11月2日。官公庁の公表資料とTSUNAGUの利用案内をもとに、旅館の売却・承継と買収・引継ぎの最初の判断に必要な情報を編集した総合ガイドです。計算例は前提を示した仮定であり、実際の成約事例や相場を示すものではありません。許認可・税務・契約条件は所在地と取引内容に応じ、管轄窓口や専門家と確認します。
堤 誠之/ジャパンリアルター株式会社 代表取締役
不動産業界21年目。旅館法人3社の再生・運営に関わり、売買・事業承継、企業保養所、空き家・空き別荘の相談に対応。保有資格は空き家相談士。個別の法律・税務・建築判断は、必要に応じて専門家と連携します。
代表者の経歴と相談できる領域を読む →制度・利用方法の出典と確認範囲
- 中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」株式譲渡・事業譲渡、調査、契約、経営者保証等の一般的な整理。個別の取引判断は専門家と確認します。
- 厚生労働省「事業譲渡に係る手続の整備」旅館業法における営業者の地位の承継と事前相談。営業計画や施設の変更がある場合は管轄窓口に確認します。
- 神奈川県「温泉関係の手続きについて」温泉利用許可の名義人変更等に関する自治体の手続例。全国の手続や審査期間を一律に示すものではありません。
- 厚生労働省「企業組織の再編に伴う労使関係」事業譲渡等指針と労働契約の承継。従業員への説明と承諾に関する整理。
- TSUNAGU「ご利用・商談・契約の流れ」売主・買主の入力、対話、契約準備、引渡しまでの利用案内。
- TSUNAGU「情報開示と秘密保持の仕組み」案件の公開範囲、D1〜D3、承認、資料の共有と取消し。
- TSUNAGU「料金について」無料で利用できる範囲、成約時の契約サポート報酬、事前説明と同意。
- TSUNAGU「堤 誠之 代表者紹介」経歴、旅館法人の再生・運営経験、空き家相談士としての相談領域。
- 国土交通省「既存建築物の活用の促進について」既存建築物の現況調査、既存不適格建築物の緩和等に関する現行ガイドラインの入口。検査済証の有無だけで適否や改修可否を断定せず、現況・工事履歴・計画を調査します。
- 京都市「旅館業の地位の承継や変更等の手続について」事業譲渡の効力発生日前の承認、標準処理期間23日、閉庁日・補正期間の除外、構造設備の変更時の事前相談。同市の手続例として記載。
- 堤 誠之 note「旅館売買・ホテル売買の現場から」2026年7月2日公開。旅館法人の再生・運営経験、設備・人員・運営資料と買主の確認事項についての本人の発信。実務コラムの編集根拠。
- 堤 誠之 note「ホテル・旅館売買の裏側」2026年7月14日公開。運営収支、修繕、許認可、契約、従業員、債権者、引渡しの整理についての本人の発信。実務コラムの編集根拠。
写真の撮影地・作者・ライセンス
城崎温泉・大谿川の夜景(兵庫県豊岡市)。663highland/CC BY 2.5。2016年10月29日撮影。元写真と利用条件 ↗
鶴の湯温泉の内湯(秋田県仙北市)。Bjckashiwa/CC BY-SA 4.0。2016年2月10日撮影。元写真と利用条件 ↗
積善館本館と朱色の橋(群馬県中之条町・四万温泉)。Kentaro Ohno/CC BY 2.0。2013年9月21日撮影。元写真と利用条件 ↗
WebP形式への変換・縮小、表示枠による切り取りを行っています。合成や色調の加工はしていません。各写真は撮影時点の風景を伝えるもので、施設の現在の営業状況や売却募集を示すものではありません。写真の利用条件は各原典に従います。